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2009.04.25

潜水服は蝶の夢を見る

ある男性の自伝を映画化し、各映画賞で多くの受賞をした映画
『潜水服は蝶の夢を見る』

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パリのファッション誌「ELLE」の編集長だったジャン=ドー、42歳。
華やかな世界に生きる彼は、成功者としての人生を謳歌し、超一流の服、食事と酒、旅、女。。。など、いわゆる「ちょいワルオヤジ」的な男。野心家で皮肉屋、失敗を知らない人生を送ってきたが、初めて救いようにない人生の苦悩を知る。

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ある日、手元に届いたばかりの新車のジャガーで、パリ郊外に住む子供たちの元へ遊びに行き、長男を助手席に乗せて芝居を観にいく途中で、脳卒中となり彼の人生は急転直下する。

脳幹を侵され全身麻痺となった彼は、左目の瞳と瞼の筋肉しか動かなくなり、左目の視覚と聴覚以外のすべての感覚がマヒしてしまう。
しかし全身の感覚はなくとも、思考や記憶など脳の認知機能は全く異常がない状態の、『ロックト・イン・シンドローム』(閉じ込め症候群)に陥ってしまった。

肉体という檻に閉じこめられた彼は絶望の淵に突き落とされて。。。

唯一機能している左目を使い「はい」はまばたき1回「いいえ」は2回続けてすることによりなんとかYes/Noの選択はできるようになったが、こちらからの意思表示は何も伝えることができない屈辱的な日々を余儀なくされる。

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そして、美しい言語療法士アンリエットが苦心の末編みだした「E、S、A、R、I、N……」とフランス語単語の使用頻度順に並べたボードのアルファベットを読み上げるコミュニケーションの手段を使って、なんとかこちらからの意思を伝えることができるようになる。

最初は「死・に・た・い」とアンリエットを悲しませたりもしていたが、やがて献身的な彼女の助けもあって、潜水服を着て暗く深い海の底にいるような状態から、蝶のように飛躍できるイマジネーションと記憶を頼りにし、20万回ものウインクの末、自伝『潜水服は蝶の夢を見る』(le Scaphandre et le papillon)を完成させる。

しかし肺炎にかかってしまった彼は、症状が悪化し、本の出版の10日後である1997年3月に息を引き取ることになる。



最初は固く心を閉ざしていたジャン=ドーだが、健康なときには感じられなかった多くの人の愛に支えられ、少しずつ変化していく様子がうまく表現されており、また面白いのがカメラワークで、冒頭のシーンから左目しか見えない彼の目線となったカメラが映し出す映像は、まるで自分が同じ状況に陥っているようなもどかしさを感じることができます。

「俺は42歳になったばかりなのに赤ん坊のように体を洗われ・・・」
「目の前にいる自分の子供たちを抱きしめてやることすらできない・・・」

と彼の心の苦悩が伝わってきます。

以前に記事にした、四肢麻痺になった男性が尊厳死を遂げるスペイン映画『海を飛ぶ夢』にも少し似てるかなと感じましたが、主人公のラモン・サンペドロが自らの「死」を選択したのと違い、ジャン=ドーは家族やまわりの人たちを愛し、生きる選択をしました。

  ぼくは生きている。

  話せず身体も動かないが、


  確実に生きている。

という彼の言葉通り、どんな状態になろうとも最後まで諦めず希望を捨てないという熱いメッセージが伝わってきます。

こういった映画をたまに観ると、二本の足で立ち、どこへでも好きなところに行くことができ、喋ったり、食べたり・・・などと当たり前の「自由」が、いかに素晴らしいことなのかと気付かされ、あらためて感謝の念を感じることができますね。

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コメント

うつの極期には、深海の底まで見てきたけど、
locked-in の患者の心理は、その数倍苦しいものなんだろうなぁ。

locked-in でも、眼球運動が残っていれば、
YES・NO以外にも、視線によりパソコンが操作できたりするんだけど、
筆者はより広範囲の脳幹損傷だったのでしょうね。

今はちょっと無理だけど、いずれは観てみたいと思いました。

リンク、置いておきますね。

http://www.icit.jp/lecture/life-informatics/handicap/body2-2.html

商品名は「アイコトバ」
世界に誇る、日本の技術です。

>まぁさん

生涯で一度だけ金縛り状態になったことがあり、目だけは動かすことができ意識もあるんだけど全身が硬直して、全く声が出せない。
という経験をしました。

これが一生続くのかと思うと恐怖ですね。。。

リンクありがとうございます。
しかし科学の進歩は素晴らしい!
以前にALSの患者さんがPC操作を眼球の動きでおこなっているのを見ましたが、もしかするとこれなのかもしれませんね。
そのときは会話に使用するボードも透明のアクリル板に五十音が書いてるのを使っていました。
映画を観ながら、「透明ボードを使えばもうちょっとスムーズにいくのにな~!」と思っていました。

でもこういう患者さんに関わってる医師や看護師、療法士の方々の努力にはあらためて頭が下がる重いです。


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